「市場化社会の法動態学」研究センター
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CDAMS主催研究会

基礎研究分野研究会
  「市場における法原理と法制度の位置」
    報告者:長谷川晃(北海道大学法学研究科教授)
    コーディネータ:山本顯治(神戸大学大学院法学研究科教授・CDAMSセンター員)
    日時:2005年7月9日(土)13:00〜17:00
    会場:神戸大学六甲台キャンパス内第五学舎4階プレゼンテーションルーム
    使用言語:日本語
*どなたでも参加できます.神戸大学関係者,CDAMS学外共同研究者以外の方は,CDAMS(cdams@kobe-u.ac.jp)まで電子メールにてご連絡下さい.
*長谷川晃先生は,著書『公正の法哲学』(信山社),『解釈と法思考−リーガルマインド・哲学のために』(日本評論社),『権利・価値・共同体』(弘文堂)を著され,我が国の現代正義論・法理論を代表する法哲学者です.

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基礎研究分野研究会
「市場の法と理論についての法哲学的パースペクティブ」

山本顯治

日時:2005年7月9日(土)13:00〜17:00
会場:神戸大学六甲台キャンパス内第五学舎4階プレゼンテーションルーム

  2005年7月9日(土)午後1時より5時まで,北海道大学法学研究科,長谷川晃教授を招き,COE基礎分野研究会が開催された.出席者はCDAMS構成員,COE研 究員,COE助手,大学院生等約20名であった.
  長谷川教授より,「市場の法と理論についての法哲学的パースペクティブ」と題する報告が3時までなされ,その後休憩を挟み5時過ぎまで活発な質疑・応答が交わされた.
  本報告では,まず「1.初めに――問題と考察の視角」において,長谷川教授がこれまで「市場」についての法哲学的考察を公表してきたその動機について触れ,ついで本報告における市場についての二つの分析視角が提示された.第一が,市場における人間の活動を焦点として,法哲学の領域での蓄積された思考の具体化をはかり,それと倫理・慣行等の制度がどのように関連するかをあきらかにすることであり,第二が,市場メカニズムという社会における自律的秩序形成のメカニズムを法という観点から捉え直すことであるとされる.
  続いて報告は「2.市場における多様な規範群と法」において,市場における倫理,慣行,法という多様な規範群に目を向けることの重要性を指摘し,その中でも市場に関する法は,市場における慣行や倫理とは異なった縁源を持つのではないか,とする.そこでは,市場の法は倫理・慣行とは異なり,自生的なものではなく,人為的なものを外部から持ち込むものが法であることが強調される.続いて,制度派経済学の考え方や,H.L.A.ハートの法についての考え方が紹介,検討される.
  「3.市場の法的統御の関心方向――過程的規整と構造的規整」および「4.市場における正義とその射程」においては,まずリバタリアニズムの規整様式と,リベラリズムの規整様式とが比較検討される.そこでは,リバタリアニズムの過程的規整様式と,リベラリズムの構造的規整様式の特色が検討される.また,それぞれの規整の基盤となる公正概念の検討がなされ,消極的自由の保障か積極的自由の保障か,また薄い平等の保障か厚い平等の保障か,が論じられる.そして,ここでは,正義が市場のなかでどのように働くかについての根本的な理解の相違があることが示される.また,ロールズに代表される,法をフレームワークとして捉えようとする考え方と,ドゥオーキンに代表される法をパラメータとして捉えようとする考え方の相違が,市場の規整にどのように跳ね返るかが検討される.
  「5.法と市場の複合的動態――法と市場とのコンポジション」においては,経済学的市場のとらえ方と,法学・政治学的市場の理解のあり方の違いが検討される.そして制度学派,ハート等の見解を念頭に置くと,市場において法も含めた制度はきわめて重要であるとし,市場は利潤追求活動に加えて,倫理・慣行が組み合わさったものとして理解さるべきではないかとする.また,正義,法が市場を抑圧するものとしてではなく,市場を教化するものとして動くためには,もっと相互融合的に共同していると捉える必要があるのではないか,とする.さらに,具体的な例として,独占禁止法をとりあげ,検討がなされる.
  「6.法理論の位置づけと機能――法理論と市場の転成」においては,もう一つの具体例として知的所有権法を取り上げ,近時の知的所有権法の動向における「市場志向」「機能主義」「自由統御型」という三つの視点を取り上げる.そして,これらの視点はより根元的な法哲学原理に基づいていることが明らかにされる.
  最後に「7.おわりに――市場の法と理論に対する法哲学的寄与の可能性」において,市場と法に関する思考を深化させるために,今後の法哲学的寄与の方向性と可能性が示される.
  報告に続いて,以下の諸点につきフロアとの間で質疑応答が交わされた.
(1)法・正義が市場に内在的なものか外在的なものか,
(2)また法が市場から距離を置くとして,その際の規範的視点の多様性,
(3)効率性という基準についての評価,
(4)価格メカニズムに還元されない市場概念の内実,
(5)市場といわゆるdeliberative democracyの関係,
(6)ハートに対するフラーの立場からの評価,またドゥオーキンとフラーの関係,
(7)リベラリズム論自体の多様性,
(8)分配問題の制度的な担い手,
(9)市場における自己責任の位置づけとドゥオーキンの見解,
(10)経済法の規整原理の多様性,
(11)アジアにおける自治型法の意味
等々について約2時間にわたり活発な議論がなされた.

(2005年7月22日)


神戸大学大学院法学研究科・法学部

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