|
「市場化社会の法動態学」研究センター
2003.07.18
1.「市場化社会の法動態学」研究の目的 現在、世界各地において、大規模かつ急速に進展しつつある社会の市場化は、これまで市場を支えてきた伝統的法秩序にも大きな変容をもたらすものとなっています。本研究拠点は、現代における市場の法秩序の変容について、規範の生成、市場の規整、そして紛争の管理という三局面に着眼することで、変容する市場の法秩序に対応する動態的な法学を構築することを目的としています。 また本拠点は、日本固有の性格と、市場の持つ普遍的性格とを兼ね備えた世界的に見ても特色ある我が国の法秩序の考察に立脚しつつ、現在世界的規模で拡大を見ている社会の市場化における法秩序の変容を研究する上での、貴重な知見を世界に向けて発信しようとするものです。 さらに、本拠点は、地域固有の性格と、普遍的性格とを兼ね備える市場の法秩序の新たな可能性をテーマとする世界各地の研究を支援し、情報交流の拠点となろうとするものです。 現代における市場の法秩序の変容として第一に観察されることは、市場の秩序形成主体としての伝統的な国家に加え、非国家的アクターが台頭しつつあり、それによって市場における新たな規範の生成メカニズムが出現しつつあることです。 第二に観察されることは、国内外の市場における経済行動の規整の主体、手法、理念が多様化していることです。例えば、経済行動の規整に関して、NPO・NGOといった新たな行動主体の果たす役割がますます重要度を増していること、各種の専門団体、自主規制団体を設置することで、より問題の特性に即した、きめ細かな規整手法が用いられていること、さらにまた、個々の市場参加者の経済行動に対し、正義・公共善や競争秩序の活性化という観点から新たな規整が行われはじめていることが挙げられます。 第三に観察されるのは、紛争管理の主体やプロセスに大きな関心が向けられるに至っているということです。規範生成メカニズムの多元化と市場規整のあり方の多様化に伴い、現在、紛争解決の方法も多様化しつつあります。例えば、国内外におけるADR(代替的紛争解決制度)の発達は、国家を淵源とする実定的、かつ普遍的なルールにもとづく解決を補完するだけではありません。ここには、関係当事者が「交渉と合意」という手法を用いつつ柔軟かつ動態的に秩序を構築していくことを可能にする新たな紛争管理論の展開にむけた強い期待が込められているということができます。 本拠点は、社会の市場化に伴い、現在法秩序が大きく変容しつつあることを認識し、そのあり様を学際的に把握する「法動態学」の研究と教育を行うことを目的としています。本拠点が提案する「法動態学」とは、次のような視点をその中核とする法学です。
このように法動態学とは、事実に法(規範)を適用して導出された「結果」を決定的なものと看なすのではなく、事実と規範の相互作用の中で、法は生成されつつ、同時に行動を規整するという、法の動態的なプロセスを重視する立場を総称するものです。 本拠点は、政治学、社会学、社会心理学、経営学、経済学等の隣接諸分野で展開しつつある規範研究、紛争処理研究の知見を積極的に摂取しつつ、変化する市場秩序に対応しうる動態的な法学の構築を行うとともに、かかる問題関心を共有する国内外の研究者・臨床家による多様で創造的な交流の制度的基盤を提供し、その中から世界をリードしうる研究者・臨床家を養成することを目的として活動します。その研究・教育内容をより具体的に述べれば以下のようなものです。
「市場化社会の法動態学」研究教育拠点は、積極的に新たな法秩序の生成に参画し、かつ異なった価値観の共生する世界において創意・工夫に富んだ法学研究と臨床応用を行うことのできる、高度な研究・臨床能力をもった世界に通用する人材の育成を目指しています。本拠点は、法学にとどまらない多くの隣接諸分野に開かれた拠点です。是非、世界都市である神戸の地を訪れ、次世代に向けた新たな「学」が生成される知的興奮に満ちた現場の推進者の一人となってください。学際的関心を持ち、従来の学問領域を積極的に乗り越えようとする柔軟な知性をもつ研究者・臨床家の来訪を我々は心より歓迎します。 |